NiPOブランドが新世代DAP『N2』を生んだワケ

NiPOブランドが新世代DAP『N2』を生んだワケ

NiPOの創立とN1

NiPO(ライポ)は、中国・深圳を拠点とするオーディオブランドです。ブランド名は、思考の柔軟性や創造性を試すために有名な古典パズルである「Nine-dot Puzzle」の9つの点(Nine Point)に由来し、固定観念にとらわれない発想力と革新的な設計哲学を象徴しています。新しい視点と優れた独創力を形にする卓越した技術力を持って、従来のオーディオ体験とは異なる境地のサウンド体験を提供します。

NiPOの初代モデルDAP「N1」は、発売直後から高い評価を受け、瞬く間に完売。その成功を礎に4年の歳月をかけ開発された次世代フラッグシップモデル「N2」は、音質と設計思想の両面でさらなる進化を遂げました。N2は中国やアジア市場でも既に確かな実績を残しており、権威ある「中国国際ヘッドホン展優秀HIFI音響賞(EHA)」を受賞。この賞は中国電子音響工業協会の「ゴールデンイヤーズ審査団」が厳格な基準に基づいて選定する、中国国内最高レベルのオーディオ賞です。

NiPOの技術力は、まさに業界標準を超える革新性に支えられています。特にN2で採用されている全分離アーキテクチャや10層HDI PCBシールド設計などの独自技術は、音質劣化を限りなく抑え、緻密な電流操作によって原音を忠実に再現しています。また、多分野のプロフェッショナル数十名と連携した開発体制のもと、徹底的な部品選別と品質管理を実施し、製品クオリティを保証しています。

NiPOブランドの原点

NiPOの創業者でありエンジニアである老黄(ラオ・ホアン)は、音響業界で30年以上のキャリアを重ねてきました。1998年からはAIWAやPHILIPSといった世界的ブランドで音響製品の設計に携わり、多くのトップクラスのハイエンド製品に触れて、その圧倒的な表現力に魅了され続けています。

深刻な不眠症に悩んでいたラオ・ホアンにとって、音楽は長い夜を支える大切な存在でした。しかし、当時試したさまざまな音楽プレーヤーはいずれも期待を満たすものではありません。音響技術者であり音楽愛好家でもある彼は、「自分を感動させることのできる製品を生み出したい」と強く思うようになりました。そして、自身のように不眠に苦しむ人々が、美しい音楽を通じて心の安らぎを得られるような製品を作りたいいう強い想いがNiPOブランドの根幹にあります。

ポータブルオーディオへの可能性

50年以上の歴史を持つ成熟した音響業界で、新たな突破口を見つけるのは容易ではありません。しかし、綿密な調査研究と試聴を重ねるうちに、ラオ・ホアンはポータブル音響製品の可能性に大きな手応えを感じました。
ポータブル製品とハイエンド据置型機器の間には、依然として大きな音質の差が存在します。しかし、限られた空間の中でサイズ、出力、バッテリー寿命、放熱といった課題を解決し、据置型に迫る音質を実現できれば、この分野で圧倒的な存在になれる。ラオ・ホアンはそう確信したのです。

驕らず徹底的な基礎研究から穿つ

この理念のもと、2019年9月にNiPOブランドを設立。設立後の2年間は基礎研究に注力し、ハイエンド音響製品が持つ優れた音質の本質的な要因の解明に取り組みました。回路構造、部品選定、材料特性や電気パラメータと音質の関係性を徹底的に研究し、ハイエンド音響機器とポータブルプレーヤーの音質差を生む本質的な要因の特定を目指しました。そして、その差を既存技術で克服できるのか、あるいは新しい技術や素材、工法による突破が必要なのかを探求し続けました。
長年にわたる研究開発と実証実験の成果として、NiPOは数多くの技術的革新を実現。無帰還ヘッドフォンアンプ、IV電流ミラー、数値制御抵抗ボリュームなど多くの革新的技術を確立し、フラッグシップモデル「N2」に搭載することに成功。さらに、アナログチャンネルを完全な分離部品で構成した世界初のAndroidポータブルプレーヤーとして、自然かつリアルで聴き疲れしないサウンドを実現し、DACの種類に関係なくNiPO独自の音楽表現を可能にしています。

最適な状態へは選定部品の"エージング"による特性変化が鍵

N2はエージングによって音質特性が最適化されます。目安時間による音質特性を記します。

エージングによって変わる音質特性
150時間後:音場が広がり、音質がよりリラックスした特性に変化
300時間後:最適な状態に到達し、N2が持つ本来の実力をフルに発揮

N2には、じっくり時間をかけることで音質が変化していく「エージング」という大きな特徴があります。これは単なる“慣らし”ではなく、内部の部品が本来の性能を引き出すために欠かせないプロセスです。

エージングの主な要素:5つの部品・変化がもたらす相乗効果

◆コンデンサおよびインダクタの安定化◆
・電解コンデンサ:新品時は電解質の活性が高く、数十時間の充放電を経ることで内部のイオン分布が均一化し、等価直列抵抗(ESR)が低減。高周波ノイズが減ることで音のクリアさが向上します。
・フィルムコンデンサ:誘電体の分極効果が徐々に落ち着き、信号伝送がよりリニアに。中域のボーカルが滑らかになる印象を与えます。
・インダクタコイル:エナメル線とコアの微細な振動が使用とともに減少し、微小共振が抑制されることで歪みが減少。

◆半導体デバイスの温度適応性◆
・AB級ヘッドフォンアンプのトランジスタは、継続使用によってPN接合の温度が安定。バイアス電圧のドリフトが減少し、小信号領域のA級特性に近づいてクロスオーバー歪みが低減します。
・熱結合効果:ヒートシンクとPCBの熱膨張係数の差異が使用とともに馴染み、熱ストレスによる接触不良が減少。

◆ハンダ接合部およびコネクタの酸化層形成◆
・新品のハンダ接合部には微細なバリが残っている可能性があります。長時間の通電により酸化層が均一に形成されると接触抵抗が下がり、結果としてノイズフロアの低減やダイナミックレンジの向上に寄与します。

エージングを経て到達する“N2本来のサウンド”

長く愛用していただく事で音楽プレイヤーが秘める音質性能が最大に発揮され、音楽の力を堪能できるリラックスしたサウンドが得られるのです。これはまさに、NiPOが目指した「据置型に迫る音質」をポータブルで体感するための重要なプロセスとなります。

今後もNiPOは、30年以上にわたる音響技術の経験と革新的な技術開発力を融合させ、据置型に迫る音質とポータビリティを両立させた製品の開発に邁進します。音楽本来の姿を追求し続けることで、オーディオの新たな可能性を切り開いていきます。

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