LUXURY&PRECISIONが誇る
純日本国産真空管搭載ハイパワーポータブル真空管アンプ「EA4」は、ハイグレードオーディオを愛する皆さんに向けて、次世代のポータブルヘッドホンアンプとして進化を遂げました。
この記事では、外観から内部構造に至るまでの変遷を辿り、EA4がどのように音質と実用性を両立させたかをご紹介します。
進化の軌跡:内部構造編
1. 完全分立ディスクリート回路
初版のEA4は、PCBのスロット構造を採用し、真空管の衝撃吸収のため四面包囲型の真空管防振構造を備えていました。また、後段を完全分立のヘッドホンアンプ構造としましたが、実際のテストでは、真空管の防振効果が理想的でなく、完全分立の出力段への供給電力やノイズ制御に課題がありました。
2. 真空管の衝撃吸収ソリューション
第2版では、PCBの回路設計と関連する構造が完全に見直されました。これにより、アンプの電源回路の瞬時出力能力が大幅に向上し、真空管の衝撃吸収構造もほぼ確定しました。しかし、このバージョンでは最大出力が約3500mWに留まり、ノイズも高めで、目標には達しませんでした。
3. 出力向上とノイズ低減
第3版のPCBの基本レイアウトは第2版とほぼ同じですが、より高出力で効率の良い電源チップに交換し、回路設計も刷新しました。アンプ回路には、10×10.5mmの大容量コンデンサを8個追加し、持続的な出力能力を強化。低音の力強さを向上させました。さらに、過電流保護や直流出力保護機能が追加され、放熱ソリューションも変更され、高出力トランジスタがサーマルパッドを介して直接外装に熱を放散できるようになりました。この結果、EA4の最大出力は約4.5Wに達し、ノイズフロアは20uV以内(計測条件A-weighted 20K BW AES17)に抑えられました。
4. 供給回路の大幅改良で出力とノイズの再最適化
第4版では、前バージョンのシングルライン電源からデュアルライン電源へと改良しました。出力トランジスタのエミッタ抵抗を単一から3つの並列抵抗に変更、合計24個のエミッタ抵抗を追加して出力の安定性を向上させました。アンプ回路には前バージョンの8個の大容量コンデンサに代わり、10×12.5mmや10×16mmの大容量コンデンサ16個を搭載し、極限の電力を蓄えることができるようにしました。これにより、最大出力は5500mWに増加し、ノイズフロアも16uV以内(計測条件A-weighted 20K BW AES17)に抑えられました。
5. 最終調整、広がる高音と低音
最新バージョンでは、サウンド面での改善がなされました。特に高音域がよりクリアにするため、前バージョンで使用されていた8個のタンタルコンデンサを、12個の大型パナソニック製フィルムコンデンサに交換。さらに、供給回路を改善し、EA4の最大出力は6500mWを超えました。最大出力が前バージョンと比べて1000mW以上向上する一方で、ノイズフロアは14uV以内(計測条件A-weighted 20K BW AES17)に低減することに成功したのです。
EA4回路基板の中でも大きな変更があった代表的なバージョンを選んで紹介しましたが、実際には音質や性能が十分に向上しなかったためにお蔵入りになったバージョンも多数存在します。特にヘッドホンアンプのような純アナログ機器では、回路設計が音質を左右する最も重要な要素となり妥協を許しません。
進化の軌跡:外観編
1. 改善された背面で高い放熱性能を実現
EA4において、最も大きな変化が見られるのが放熱のためのデザイン変更です。6500mW@32Ωの高出力を維持するためには、効率的な放熱が不可欠です。そこで、EA4の最終デザインには「溝構造」を導入し、熱を効率的に外部に放出するようにしました。
2. 見やすい音量表示で誤操作を防止
ユーザーのフィードバックを反映し、EA4には専用の音量表示を追加。小型イヤホンを使う際にも、誤って大音量で再生するリスクを回避できます。特注の電位計により、音量を直感的に確認しつつ、操作性と視認性を両立しました。
3. 操作パネルの最適化で機能性を向上
EA4は、日常使用での利便性も考慮。鞄内での誤作動を防ぐため、電源スイッチは背面の押しボタンスイッチへと移行し、使い勝手を向上させました。
4. 人間工学に基づいた電源設計と充電口の配置
誤操作を防ぎながら直感的に操作できるように、電源と充電ポートの配置も工夫しました。背面に配置された長押し電源スイッチと、充電ポートの位置により、充電時の視認性が向上し、使いやすさを追求しました。
進化の軌跡:細部に神は宿る編
EA4の外観と内部回路の進化について紹介してきましたが、さらに徹底したよい製品の開発には一見目立たないながらも非常に重要な設計となったものをご紹介します。
それが窒化アルミニウム導熱パッドです。
上記の画像には、EA4内部の8個の窒化アルミニウム導熱パッドが写っています。EA4がフラッグシップ級のポータブルヘッドホンアンプとして、その特徴的な高出力を実現できる理由の一つが、この高性能な熱管理です。ポータブルアンプという小型で限られた制限の中で大きな出力を実現するためには、以下の2点が重要です。
1. 歪みのない高出力を実現するアンプ回路。
2. 高出力によって発生する大量の熱を効率的に放散する仕組み。
これがないと、内部のコンポーネントが過熱し、破損する可能性が高まります。したがって、効果的な熱伝導と放熱面積の増加が必要です。
基本設計では、8個の大サイズTO252トランジスタを分立回路として使用しています。それぞれの大型トランジスタ同士の間隔を広く取り、放熱を促進すると同時に干渉を軽減しています。そして、見落とされがちな部分が、これらのトランジスタに付属する導熱パッドです。この導熱パッドが、EA4内部から外殻に熱を効率的に伝導し、素早く放散できるかを決定づける要素です。
数ある絶縁性で安定した熱伝導素材の中でも、『窒化アルミニウム』は特に優れた熱伝導性を持っています。通常のシリコンパッドの熱伝導率は3~4 W/m·Kですが、窒化アルミニウム製パッドは10~15 W/m·Kです。さらに厳選をすることでEA4で採用する白い8つの窒化アルミニウムパッドの熱伝導率は18.6 W/m·Kに達します。
このパッドを通じて熱を外装に伝えています。EA4の金属外装は巨大な放熱フィンの役割を果たし、このため、10周年記念版には導熱性能が最高クラスの金属である銅を外装素材として選択しました。
EA4に貼り付けてテストした結果、放熱効率が大幅に向上し、長時間の高電流耐久テスト時において外殻の温度上昇速度が大幅に改善され、安定時の最高温度は以前と比べて約5〜10℃低下しました。これらの包括的な放熱対策により、多くの部品が詰まったEA4の限られたスペースでも、32Ωで最大出力6500mWを実現でき、10周年記念限定版では7500mW@32Ωにまで達しました。
今回ご紹介した開発遍歴の一端を通じて、LUXURY&PRECISIONの開発や音質へのこだわりと、皆さんへの誠意を感じ取っていただければ幸いと思います。
※編集者説明あり